今回は菊花賞の「全頭診断」を行う。
これまで主に「内外の有利不利」、「上がりの重要性」、「血統」について考察してきた。
そのことも考慮した「総評」をお届けする。出走頭数多いため、今回は3回に分けてお送りする。今回は第2弾。
週末の予想に直結する可能性が高く、内容は必見。最後の1冠を目指す牡馬たちを、紐解いていこう。
全頭診断その2
アクションスター(D)
父アグネスタキオン、母父ルーソリテールという血統。ルーソリテールは芝のマイル〜中距離で活躍した馬だが、カドラン賞(仏GI/芝4000M)やロイヤルオーク(仏GI/芝3000M)の勝ち馬ジェントゥーを輩出している。もっとも、それ以外に特別強調できる要素はなく、父の戦績が相当ネックだ。
アグネスタキオンの最大の長所はスピードだ。“高速の粒子”と表現されるほどの瞬発力を持ち、産駒を見渡しても総じてスピードに特化している。
一方でスタミナという点では疑問符がつく。
そもそもアグネスタキオン産駒が3000M以上のレースに出走したケースは16回しかなく、成績は(0−0−1−15)と散々なものだ。この中には菊花賞におけるクォークスター(4番人気9着)やノットアローン(6番人気18着)、ダイワワイルドボア(4番人気8着)の成績も含まれている。
しかも唯一の好走馬はエナジーバイオで、舞台は重賞ではなくオープンの万葉Sだった。しかもこの時の斤量は50キロ。つまり、かなり恵まれた中でも3着がやっとというレベルのスタミナしか持っていないのだ。
GI芝3000Mという舞台設定はアクションスターにとって相当酷だろう。
タマモベストプレイ(D)
父フジキセキ、母父ノーザンテーストという血統。スプリングSまでの5走ですべて馬券圏内、クラシックと神戸新聞杯でもそれぞれ差のない競馬をしている実力馬だ。
しかし、血統面では強調できない。
フジキセキ産駒のベストはやはりマイル前後。南アフリカで生産されたサンクラシークがドバイ・シーマクラシック(ドバイGI/芝2400M)で勝利したものの、2000Mを超えるGIにおける実績はそのくらい。国内ではいまだ2000Mを超えるGIで勝った産駒はいない。
菊花賞でソングオブウインドの2着となったドリームパスポートという例外はあるにせよ、フジキセキ産駒の芝3000M以上のレースでの成績は(0−2−1−8)。昨年もフジキセキ×母父ロベルト系(しかもリアルシャダイ)という配合のタガノビッグバンが6番人気に支持されながら14着に大敗している。
しかもタマモホットプレイ、タマモナイスプレイ、チャームポットらはいずれもマイル以下で活躍している馬。血統的な下地はないに等しい。
インパラトール(C)
父ディープインパクト、母父ストームキャットという血統。ストームバード系との組み合わせはキズナを始めとして、アユサンやヒラボクディープといったディープインパクトの成功配合だ。
しかもストームバード系は京都の高速馬場に強い。京都大賞典ではアンコイルド(父ストームキャット系ジャイアンツコーズウェイ)が7番人気ながら2着に激走し、デイリー杯を勝ったホウライアキコもストームバード系だし、過去にはエーシンフォワードとエイシンアポロンがマイルCSを連覇している。
もっとも、スタミナという点ではどうしても疑ってしまう。ディープインパクトはそれほどスタミナのある種牡馬ではないと考えているし、母系も特別スタミナを感じる配合ではない。
中段につけられて速い上がりを使える点では強調できるか「一定のスタミナ」という下地の面でどうか。
バンデ(C)
父オーソライズド、母父プリオロという血統。エルコンドルパサーを凱旋門賞で破ったモンジューの系統で、スタミナという面では申し分ない。
しかし、この馬の場合は近年の菊花賞で必要な「瞬発力」を持ち合わせていない。
前走は2位以下を1秒も突き放す大楽勝で、上がり3ハロンは33.5を記録したが、前半の7ハロン中4ハロンが13秒台、1ハロンが12.9という超スローペースだったのだから、特別評価できる内容ではない。
セイウンスカイ以来、逃げ切り勝ちがない菊花賞においては厳しい脚質、しかもネコタイショウの抽選突破によって難しい立場となった。人気がないならヒモで買ってもいいが、人気になりそうな点も悩ましい。
ヒラボクディープ(C)
父ディープインパクト、母父ストームキャットという血統。ディープインパクトの成功配合で、詳しくはインパラトールの欄で記したとおり。
前走は特に見どころもなく、長距離GIで好走できる底力も血統的には期待できない。しかもキャリア7戦で上がり1位は1度もなく、2位が2回あるのみ。
叩き2戦目の上積みはあるかもしれないが、それでも厳しいだろう。
ナリタパイレーツ(C)
父ジャングルポケット、母父フジキセキという血統。うーん、悩ましい。と、本音が出てしまうほど、ちょっと微妙な馬。
父ジャングルポケットはいい。凱旋門賞馬トニービンの血を受け継ぎ、産駒のオウケンブルースリは菊花賞を、ジャガーメイルが天皇賞春を制し、トーセンジョーダンも2着に食い込んだ実績がある。豊富なスタミナを持っていることに疑いの余地はない。
問題は母父だろう。フジキセキは前述のとおり、長距離戦に向いた種牡馬ではない。例が少ないのでなんとも言えないが、この傾向は母父になっても変わらないだろう。
もっとも、今年のメンバーであれば通用してもおかしくない。京都中距離での実績がある点も気になるところ。
ということで、現時点で最も買いたい馬はこの馬!
その馬の名は……(現在10位前後!当サイトの紹介欄に答えを掲載しています)
次回は「全頭診断」の第2弾を届ける予定。乞うご期待!