今週は東京芝1800Mで行われるGII毎日王冠の検証を中心に行っていく。
まずは、近年の傾向から見ていこう。
かつて、毎日王冠は3歳馬にとって「鬼門となるレース」だった。2000年以降は7頭の3歳馬がこのレースに臨んでいたが、最高順位は4着で馬券に絡むことはできなかった。
しかし、近年は傾向が変わりつつある。
2010年、アリゼオがオグリキャップ以来となる3歳馬での毎日王冠制覇を成し遂げると、2011年にはリアルインパクトが2着。そして昨年はカレンブラックヒルとジャスタウェイの3歳馬がワンツーフィニッシュを成し遂げた。ここ3年で3歳馬が5頭連対している。
それまで3歳馬にとって鬼門となるレースだったにもかかわらず、なぜ突然、3歳馬が台頭するようになったのだろうか?
理由は以下の2つだと考えられる。
1.菊花賞の権威低下
2.有力古馬の出走回避
まずは「1」から説明していこう。近年、競馬のスピード化に伴い、長距離レースの権威はどんどん落ちしている。菊花賞は牡馬クラシック最終戦と位置づけられているが、近年は1000万に毛が生えたレベルのメンバーしか揃わなくなってしまった。
距離に不安のある有力馬たちは無理をしてまで菊花賞を使うことはなくなり、天皇賞秋やジャパンカップを目標にするようになった。
もっとも、同世代としかレースしたことのない馬を、いきなり一線級の古馬が集まるGIに出走させることはできない。よって、毎日王冠をステップレースに選択することが多くなり、世代トップクラスの3歳馬の参戦に伴って、3歳が結果を出すようになったのだ。
そして「2」について。古馬に関してはむしろ3歳馬と逆の現象が起きている。古馬は“秋古馬3冠”と言われる天皇賞秋、ジャパンカップ、有馬記念を目標に調整を行ってくる。
だが、秋古馬3冠のすべてに出走することは競走馬に大きな負担を与えてしまう。GI3連戦の消耗度は半端ではなく、ほとんどの馬がすべてのレースで全力を出すことなどできない。これまでに秋古馬3冠を達成したのがテイエムオペラオーとゼンノロブロイの2頭のみという事実は、秋古馬3冠の過酷さを証明する結果といえる。
だから近年は、秋は3戦のみ(=秋古馬3冠レース)にしぼり、ステップレースをパスして天皇賞秋に休み明けで臨む馬が増加している。一昨年のトーセンジョーダンは札幌記念からの、3年前のブエナビスタは宝塚記念からの休み明けだった。
もっとも、天皇賞秋を本気で狙ってくる馬は毎日王冠をステップレースとするケースもまだまだ多いので、やはり有力3歳馬の参戦増加が3歳馬巻き返しの大きな理由といえるだろう。
昨年の1着カレンブラックヒルはGI馬で、ジャスタウェイはアーリントンカップの覇者でNHKマイルカップでも2着に0.2秒差の6着で上がり最速を記録した素質馬だった。一昨年の2着、リアルインパクトもNHKマイルカップの覇者である。
まとめると、毎日王冠は上記2つの理由によって3歳馬が激走する条件が整っている。「鬼門のレース」ではなくなってきているということだ。今年は皐月賞3着のコディーノが出走。ダービーでは凡走したが、世代屈指の実力を持っているだけに、ここでも好勝負は必至だろう。
では、「毎日王冠で強調できる血統」とはどういった血なのだろうか? 私はこの血統に注目している。