今回も天皇賞秋の「全頭診断」を行う。
これまで主に「根幹距離実績の重要性」、「キャリア考察」、「58キロ実績」そして「血統」について考察してきた。
そのことも考慮した「総評」をお届けする。出走頭数多いため、今回は3回に分けてお送りする。今回は第2弾。
週末の予想に直結する可能性が高く、内容は必見。天皇盾の名誉を目指す出走馬たちを、紐解いていこう。
全頭診断その2
※馬名(血統評価A〜E)
エイシンフラッシュ(B)
父キングズベスト、母父プラティニという血統。
ドイツ血統のため、検証で上げた好走血統は持っていない。しかしドイツ血統といえばノヴェリストがキングジョージで驚異のレコードVを記録したように、スピードとタフさを兼ねそろえた血だ。血統的には高い評価が与えられる。
もっとも、以下の検証で書いたように、天皇賞秋の「歴史」がエイシンフラッシュにとっては逆風だ。
58キロの克服歴は豊富で斤量の面で不安はないが、キャリアは25戦と多い。もちろん、ダービー馬が6歳まで現役を続けて、さほど衰えを見せていないというのはなかなか過去になかったケースのため、例外という考え方もできる。今年のメンバーは層が薄いため、普通に走ってもおかしくはない。しかし、多くの不安要素があることは確かだ。
ジャスタウェイ(B)
父ハーツクライ、母父ワイルドアゲインという血統。
ハーツクライ産駒は当コースで複勝率43パーセントを誇っていて血統的には悪くない。
しかし、その他の面でプラス要素がない。脚質が極端なため、2、3着が多いことは分かるが、それでも4歳馬で2勝というのはあまりにも実績不足だろう。GII以上の根幹距離重賞で実績もなく、58キロどころか57キロでの好走歴もない。
斤量が重くなれば最初に削がれるのは切れ味だ。ここ3走は上がり1位で好走しているジャスタウェイだが、斤量によって最大の持ち味が削がれてしまう可能性は大いにある。
昨年も毎日王冠では2着だったが、本番では6着だった。今年は去年より力よりつけているとはいえ、58キロで走らなければならない。しかも、人気も4、5番になる見込み。
総合的に考えれば、おいしいか、おいしくないかは一目瞭然だろう。
ヒットザターゲット(B)
父キングカメハメハ、母父タマモクロスという血統。
タマモクロスはグレイソヴリン系で、4代前だがノーザンテーストの血も持っている。血統的には魅力的と言っていい。本質的には瞬発力のある血統だし、ここ最近好走時には良い脚も使っている。
根幹距離GII京都大賞典を勝っている点も強調材料だ。もっとも、その勝利は高速馬場による“フロック”だったという見方もできるし、実際のところローカルのGIIIがベスト条件だろう。
58キロでの好走実績もなく、キャリアも多すぎる。やはり厳しいと見るのが妥当だ。
ジェンティルドンナ(A)
父ディープインパクト、母父Bertoliniという血統。
母父のBertoliniはダンジグ系で天皇賞秋の好走血統に合致している。ディープインパクトはこのコースで複勝率48パーセントと圧倒的な適正を見せていて、勝率はなんと28パーセント。血統的はピッタリと言わざるを得ない。
加えて、本質的に「瞬発力型」のジェンティルドンナにとって、スピードが求められるこの舞台はベストだ。府中でもGIで2戦2勝と舞台に問題はない。もちろん、根幹距離GIをいくつも勝ってきた実績も◎だ。
ケチを付けるとすれば56キロがダメという可能性もあるという点だが、宝塚記念で3着に来ているところを見ても、克服できる可能性のほうがむしろ高い。
4歳秋は競走馬が最も充実する時期。今年はまだ2戦で、消耗もしていない。ここは外せない。
トーセンジョーダン(A)
父ジャングルポケット、母父ノーザンテーストという血統。
父、母父ともに天皇賞秋の好走血統。実際に2年前のウィナーでもあり、適正に関していまさら述べる必要もない。
その頃の強さはさすがにないだろうし、キャリアも積んできていて消耗度が高くなっていることは間違いない。
ただ、前走の札幌記念は完全に参考外だし、今年のメンバーなら状態さえ良ければ通用してもおかしくない。そう、この馬は状態がすべて。そこが戻っていれば面白い穴馬にはなり得るがどうか。
トウケイヘイロー(B)
父ゴールドヘイロー、母父ミルジョージという血統。
加えて母母父がノーザンテーストで、好走血統に合致している。5代前にリボーの血を持っていることも好印象だ。ゴールドヘイローがマイナー血統で、王道の府中芝2000Mでどうかというのは気になるが、総合的にみてまずまずといったところだろう。
キャリアは17戦と調度良く、3連勝中と勢いもある。58キロでの好走歴こそないが、2走前の函館記念では57.5キロで激走。
道悪の札幌という極端過ぎるレースを勝ったことと鞍上で過剰人気している印象も否めないのは気になるところだが、やはり有力な1頭であることは間違いない。
さて、今回は枠順の関係で偶然、3強の総評が固まったので、「最も買いたい人気馬」を記しておこう。
この後、天皇賞秋の「全頭診断」第3弾をお送りする。乞うご期待!