ファンファーレが鳴り響いたあと、一瞬の静寂が訪れる。

沈黙を破るゲートが開いた瞬間、内田博幸騎手はその豪腕でゴールドシップを前へ前へといざなった。

芦毛の怪物は、ズブさを見せながらも徐々に前へ前へと進出し、今までとは異なる先行策で競馬を進めた。

多少かかりながらも、絶好の位置取りで競馬を進め、4コーナーを回る。

ライバルのジェンティルドンナとフェノーメノを横目に見ながら直線へ向いた白き馬体は、タフな馬場コンディションをもろともせずに弾け飛んだ。

“4歳3強”と言われた宝塚記念だが、終わってみれば“1強”だった。

そんな思いを抱かせる、ゴールドシップの完勝劇だった。

秋へと広がる新たな夢

ゴールドシップは父ステイゴールド、母父メジロマックイーンという“現代競馬の最新トレンド”とも言える血統。オルフェーヴルや先日引退したフェイトフルウォーなど、数々の活躍馬を輩出している配合だ。

宝塚記念では、父母父で季節適性抜群のディクタスの血が躍動する傾向にある。ステイゴールド産駒はドリームジャーニー、ナカヤマフェスタ、オルフェーヴル、そしてゴールドシップと、これで4勝目であり、適正の高さを疑う者は、もはや誰もいないだろう。

ジェンティルドンナやフェノーメノを寄せ付けなかった強さは圧巻だったし、血統的にはここからの成長にも期待できる。秋にはどんな馬になっているのだろうか。

今のところ、古馬の王道路線を歩む予定のようだが、個人的には追加登録してでも凱旋門賞に挑戦してほしいと思っている。重い馬場への適正が高く、枠順を区にせず、何より強い。オルフェーヴルやジェンティルドンナに加えてゴールドシップも参戦となれば、盛り上がることは間違いないし、史上最高のメンバーで凱旋門賞制覇へ臨むことになる。思い浮かべただけでワクワクしてこないだろうか?

現実的には秋古馬3冠ロードを進むのだろう。ただ凱旋門賞行きを期待する声は挙がるだろうし、陣営の判断に注目したい。

ロンシャンで白い馬体が躍動する夢を、“世界一”の称号を手にする夢を、秋に見られたら幸せだ。