日本馬は凱旋門賞でなぜ勝てないのか?
今年は2頭の日本ダービー馬、オルフェーヴルとキズナが挑んだものの、それぞれ2着、4着に敗れて、またしても悲願はかなわなかった。
オルフェーヴルが2年連続で2着となったことや、日本で決して超一流とはいえなかったナカヤマフェスタが2着に来たように、日本馬のレベルは既に世界最高クラスにある。
にもかかわらず、どうして日本馬は凱旋門賞で勝てないのか。そこには馬場適性や斤量の問題、ヨーロッパ勢の層の厚さなど、様々な理由が考えられる。
中でも、私が最近考えるようになったのが「ステップレースの選定の仕方」にある。来年、再来年への教訓という意味も込めて、そのことについて記しておきたい。
同じ舞台を経験することが本当に強みになるのか?
凱旋門賞のステップレースといえばフォワ賞とニエル賞。出走メンバーが3歳馬と古馬という違いがあるとはいえ、どちらもロンシャン競馬場の芝2400Mという凱旋門賞と同じコースで行われる。このため、有力馬たちはこのレースを使って本番に臨むことが多い。
最近は日本馬も直行という選択をなるべく避けて、これらのステップレースを使ってから本番に臨むことがほとんどだ。
だが、一歩立ち止まって考えてほしい。ステップレースは本当にフォワ賞やニエル賞で良いのだろうか?
競馬関係者は皆一様に「凱旋門賞と同じ舞台を経験できることは大きな強みになる」と語る。しかし、本当にそうなのだろうか? この点は疑問でならない。
例えば日本ダービーのステップレースは、ダービーと同じ東京芝2400Mで行われる青葉賞だが、1984年の創設以降、ただの1頭も青葉賞からダービー馬は出ていない。シンボリクリスエスやゼンノロブロイといった後の年度代表馬ですら、ダービーでは2着が精一杯だった。
理由としては「3歳春の段階で2400Mを2走続けて使うことの過酷さ」や「ダービーまで中2週というローテーション」といったことが挙げられている。これは、凱旋門賞とそのステップレースにも当てはまることではないだろうか?
そういうと「時期が違う」とか「古馬には当てはまらない」と突っ込まれそうだが、私は同等だと考えている。
青葉賞からダービーも、フォワ賞もしくはニエル賞から凱旋門賞も、距離はすべて2400M×2=4800Mだ。しかし、東京とロンシャンでは馬場が全く違う。池江泰寿調教師が「3000Mを走るスタミナが必要」と語ったように、ロンシャンでの2400Mは東京でのそれに比べて確実に競走馬を疲弊させる。
ここで思い出されるのが阪神大賞典と天皇賞春の関係性だ。現代競馬はスピード化が進んだことにより、真のステイヤーはいなくなった。昔は阪神大賞典から天皇賞春に進み、連勝を飾る馬も少なくなかったが、近年はオルフェーヴルやゴールドシップが圧倒的人気に支持されながら惨敗したように、ほとんどリンクしていない。
これは2戦続けて3000Mを使うことが競走馬に与える負担の大きさを示唆するものだ。ステイヤーではない馬にとって、2戦続けて3000M以上を走破しなければいけないというシチュエーションはかなり過酷なものである。ステップレースで「見えない疲労」がたまり、本番に影響を与えている、という考え方もできる。(※ビートブラックは阪神大賞典から天皇賞春に進み、1着となったが、阪神大賞典では4.0秒差負け。実質、3000Mも走っていない)
実質3000Mのスタミナが要求されるフォワ賞やニエル賞を使い、さらに過酷な本番を迎える。これが本当に日本馬にとってベストな選択なのだろうか? もしかしたら今年のオルフェーヴルやキズナも「見えない疲労」を抱えていたのかもしれない。
東京芝2400Mで走った経験がなくても、ダービー制覇は可能だ。
3000Mを経験しなくても天皇賞春で勝つことはできる。
だからこそ、凱旋門賞を見据えて出走する大事なステップレースの選定を、今一度考えなおす時期に来ているのではないか? 私はそう思えてならない。
さて、今週末は牝馬クラシック最終戦の秋華賞が行われる。このレースでポイントになるのが「アメリカダート血統」。今年もダートの血を持った馬たちが出走してきているが、中でも私が注目しているのは以下の馬。面白い穴馬になるかもしれない。