岩田康誠騎手は、なぜか嫌われている。
今に始まったことではないが、彼は競馬ファンからの人気が低い。日本で随一のジョッキーであるにもかかわらず、なぜか毛嫌いされているフシがある。
スマートではない騎乗ぶり、レース後の派手なパフォーマンス、そして地味すぎるルックスetc……。考えてみれば、ファンに好かれない理由は1つや2つではない。
しかし一方で、ここには「競馬ファンが抱える矛盾」が見え隠れする。今回はその矛盾について記していきたい。
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外国人騎手の優遇を嫌いながらスマートな騎乗を好む
海外のトップジョッキーの来日により肩身が狭くなる一方の日本人騎手たち。
若手ジョッキーはおろか、日本人トップジョッキーでさえ外国人騎手の脅威にさらされ、お手馬を持っていかれることも珍しくはなくなった。オルフェーヴルが凱旋門賞へ臨むにあたり起こった池添謙一騎手とC・スミヨン騎手との乗り替わりは、言ってみれば今の時代では“普通の出来事”である。主戦ジョッキーが最後まで定まらず、外国人ジョッキーの持ち回りとなったルーラーシップも代表的な存在だ。
当然、競馬ファンはこの現状を好んでいない。日本人ジョッキーの台頭を待ち望む声や、特にJRA騎手の情けなさを嘆く声はあちこちで上がっている。
そんな中で、ほとんど“ただ一人、外国人騎手に立ち向かっている”と言っても過言ではないのが岩田騎手だ。今年はリーディング争いでこそ3位だったものの、GI勝利数は8勝(海外、地方含む)。ジェンティルドンナでの3冠(※オークスは川田騎手騎乗)を筆頭に、ディープブリランテでダービーを、ロードカナロアで香港スプリントなどを制覇。大一番での集中力は誰もが認めるところだろう。
しかし、そんな岩田騎手を競馬ファンは好まない。日本で1、2を争う技術を持つにも関わらず、である。
なぜなら、(これは私の肌感覚だが)競馬ファンは“スマートな騎手”を好む傾向にあるからだ。
道中波風を立てずに、馬の邪魔をせずに騎乗をし、直線ではいつの間にか先頭にいる……。そんなスマートな騎手がみんな大好きなのだ。そういった観点からいくと、岩田騎手は真逆の存在といえる。
しかし、ここがある種の矛盾なのではないか。
JRA出身騎手の多くはスマートな騎乗をしている。しかし、現実にはそのスマートな騎乗では勝つことはできていない。技術の問題はもちろん、JRA出身騎手内にある“暗黙のルール”や“上下関係”は確実に制約になっている。実際、積極的に馬群の狭いところを割ったり、それまで控えていた馬を先行させたりする外国人騎手に馬を奪われてばかりというのが現状だ。
岩田騎手は美しくはないが、外国人に勝るとも劣らない貪欲さがある。勝利への執念という意味でも、伝わってくるものがある。何より、実際に勝っている。
確かにNHKマイルカップで落馬事故の原因を作ったことを筆頭にすべてがほめられた騎乗だったわけではない。問題視されることも多々ある。しかしながら一方で、JRA出身騎手内に蔓延している“ぬるい騎乗”の横行もまた、同じくらい大問題で、岩田騎手が表立って批判されるのは“違う”のではないかと感じる。
競馬ファンは外国人騎手に勝るとも劣らない騎手の出現を期待しているが、彼らの多くは“スマートな騎手(=多くの場合、ぬるい)”を好む。
だから日本人騎手で最も存在感を示している騎手の一人なのに、岩田騎手は嫌われる。
勝てないスタイルが好まれ、勝つためのスタイルが嫌われる。
この点が長年、競馬ファンたちが抱えている矛盾ではないだろうか。
もちろん、理想としてはスマートな騎乗をして武豊騎手くらい華がある騎手が競馬界を引っ張っていってくれれば良いのだろうが、現実にはそうではない。岩田騎手ももう少し正当に評価されて良いのではないかと、個人的には思っている。